学会誌・論文報告集

「論文報告集」投稿の手引き

地盤工学会会誌部

1.はじめに

地盤工学会論文報告集(Soils and Foundations)は、英文雑誌として1960年に創刊された伝統ある定期刊行論文集であり、国際的にも高く評価されている。

学術情報源としては国際会議論文集や単行本もあるが、定期刊行論文集が特に重要視されるのは次の三つの理由による。(1)全論文(Full Paper)による査読にパスし、査読意見を取り入れて改善された、書き下ろし論文だけが掲載される。(2)書面 討議によって、意見交換が公開の場で確実に行われる。(3)多くの研究機関等の図書室に保存され、永く多くの人に読まれる。

したがって、論文報告集に掲載される論文、報告、研究ノート等は、読者にとって有益な内容を含むべきことは当然であるが、内容が正確に読者に伝わるように書かれていなければならず、かつ、少数の専門家仲間だけでなく、かなりの数の読者にとっても理解しやすいように書かれている必要がある。誤解なく容易に理解できるように論文を書くことは、査読者に余計な負担を掛けないためにも重要なことである。そのためには、原稿を提出する前に、第三者に読んでもらい、批評を受けることが、極めて有効であるから、必ず実行して頂きたい。

この手引きは、読みやすい論文、報告等を書くために必要な事項および参考となる事項について述べたものである。

なおこの他に、原稿作成や投稿についての基本的な規則を記した「地盤工学会論文報告集投稿要項」を必ず参照されたい。

 

2.論文、報告の構成

論文、報告は原則として次の構成で書かれるものとする。

(1) 表題

(2) 要約 (Abstract)、キーワード (Key words)および国際地盤工学分類 (IGC = International Geotechnical Classification)

(3) まえがき (Introduction)

(4) 本文

(5) 結論 (Conclusions)

(6) 謝辞 (Acknowledg(e)ments)

(7) 記号説明 (Notation)

(8) 参考文献 (References)

(9) 付録 (Appendix)

 

3.投稿原稿と印刷原稿

投稿原稿とは、論文、報告、研究ノートおよび討議の査読の段階で用いる原稿である。

印刷原稿とは、採用決定後に印刷用に提出する原稿である。

投稿原稿、印刷原稿は以下の論文、報告構成要素および印刷原稿の書き方を参照して作成する。

 

4.論文、報告構成要素

(1) 表題

論文、報告の表題については次の点に留意すること。

(a) 表題は簡潔で、しかも原稿の内容を的確に表現しているものでなければならない。

(b) 表題が冗長となるのを避けるために、「…に関する研究」のような言葉は省略する。

(2) 要約 (Abstract)、キーワードおよび国際地盤工学分類 (IGC)

(a) 要約は、それを読めば、その論文、報告の本文を読む必要があるか否かを判断できるように、できるだけ具体的に書くこと。また、論文の構成を示す「2.では…3.では…」という書き方は避ける。次のような順序で書くと書きやすい。

・研究の目的

・研究方法……理論、室内実験、現場観測の別を明確にする。

・仮定条件……特に理論的研究の場合に必要。

・主要な結論…論文報告本文の結論と重複してもよいから、できるだけ具体的、定量的に述べる。

(b) キーワードは付表のリストから5〜10個程度を選び、アルファベット順に並べて、重要なものにはアンダーラインを付す。リスト以外のキーワードを使用する場合には( )書きとすること。

(c) 国際地盤工学分類 (IGC)は、付表のリストから1〜3個選び、重要度の高いものから並べる。

(3) まえがき (Introduction)

「まえがき」では、論文、報告の対象としている分野の文献の検討経過やその背景について簡潔に述べ、次に、その分野の中でその論文の対象としている目的と範囲を明確にすることを原則とする。なお、過去の文献を詳述することに特に意義がある場合は、章を別に設けて書いてもよい。

(4) 本文

論文、報告の本文は、適当に区分された章・節に分け、必要に応じてサブタイトルを使用する。なお、考察の対象範囲を常に念頭におき、それを逸脱しないよう心がける。

(a) 図・表・写真 (本文とは別紙に作成する)

図の仕上がり寸法は次の3種類を標準とし、著者が指定(印刷原稿提出時オリジナルに指定表記)する。

・A寸法……横寸法 8.5cm以下

・B寸法……横寸法 8.6〜17.0cm

・C寸法……全ページ寸法 17.0cm×21.0cm

ただし、A寸法の図を二つ並べてB寸法としたり、A、B寸法をまとめてC寸法とするような図面配置の指定が望ましい。寸法の指定は図を印刷した紙のすみに鉛筆書きする。

図中の文字および数字は、写植かレタリングセットによる仕上げ、または同等以上の仕上げとする。図は仕上がり寸法の1.5〜3倍の大きさに書くのが望ましい。仕上がり図面 (A寸法)における線の太さ、文字・記号の大きさの適切な例を、図−1に示す。

図−1

表は原則として活字で組むので原稿用紙にタイプしたままでよいが、複雑な表や図中の挿入表、あるいは表の中に図が入る場合はすべて墨入れ仕上げとする。

写真は白黒(カラー)の光沢仕上げとし、大きさは仕上がり寸法の2倍程度のものが望ましい。仕上がり寸法は図に準じてA、B、C寸法のいずれかを選択し、寸法指定を写真の裏か写真を貼付けた台紙のすみに鉛筆書きする。カラー写真については別途料金を著者が負担する。(詳細は事務局に問合せること)

図、表、写真にはそれぞれ通し番号をつける。図や写真の通し番号は、図を印刷した紙などのすみ、あるいは写真の裏に鉛筆書きする。

図・表・写真の説明は、一覧表として別紙にまとめる。版権の問題がある図や写真の場合は、説明中に出典を明示する。

(b) 数式(印刷原稿提出時オリジナルに指定表記のこと)

数式はなるべく広いスペースをとって大きく鮮明に書き、通し番号をつけること。大文字、小文字の区別を明示することが望ましい。特に次の文字については大小の区別を明らかにすること。

C,K,O,P,S,V,W,X,Z

ギリシャ文字のγ(ガンマ)、ν(ニュー)、μ(ミュー)、ω(オメガ)はアルファベットのr(アール)、v(ブイ)、u(ユー)、w(ダブリュー)とそれぞれ混同されやすいので、その呼び方を朱筆で示すこと。

下つきにはΛを、上付きにはVをそれぞれ朱筆で示す。タイプの場合l(エル)と1(イチ)が、手書きの場合l(エル)とe(イー)が間違えやすいので朱筆で注記する。

イタリック字体にはイタまたはアンダーラインする、ローマン字体にはローマンとそれぞれ朱筆で注記する。(実際にイタリックで表記されているものはマーキングの必要はありません。)

(5) 結論 (Conclusions)

「結論」では、本文で述べられた考察から得られた明確な結論をできるだけ具体的に述べる。

(6) 謝辞 (Acknowledg(e)ments)

「謝辞」には、研究の遂行または論文、報告の作成に当たって著者が受けた助言、援助などに対して感謝の言葉を述べるほか、当然の業務としての協力に対しても、それを記憶にとどめ、責任の所在を明らかにする必要がある。前者の場合、単に儀礼的な意味での謝辞は避けるべきであって、かえって迷惑を掛ける可能性もあることに留意したい。

実験の一部を担当したが、ルーティン試験であって、結果の解析や論文の作成には関与しなかった協力者は、著者としてよりも、むしろ謝辞の中でその名前を出し、その担当事項を簡潔に述べることが妥当である。

(7) 記号説明 (Notation)

読者の理解を助けるために、論文、報告中に用いられた記号をアルファベット順に並べ、その定義を明らかにすることが望ましいが、標準的な記号説明は論文報告集の裏表紙に掲載されているので、重複を避け省略されたい。

(8) 単位

国際単位系(SI)とする。ただし重力単位を併記することはさまたげない。

(9) 参考文献 (References)

(a) 本文中の該当箇所に著者名と年号を、Bishop et al. (1965)または(Bishop et al., 1965)と記入し、次の例によって文末にまとめて著者名のアルファベット順(同じ著者名の場合は年代順)に記載する。なお、和文の文献には末尾に(in Japanese)と記す。

[例]

1) Bardet, J. P. and Proubet, J. (1991): A numerical investigation of the structure of persistent shear bands in granular media, Geotechnique, 41, 599-613.

2) Bishop, A. W., Webb, D. L. and Skinner, A. E. (1965): Triaxial tests on soil at elevated cell pressures, Proc. 6th ICSMFE (ed. by Terzaghi, K.), November 17-20, 1999, Montreal, 170-174.

3) Ishihara, K. and Yoshimine, M. (1992): Evaluation of settlements in sand deposits following liquefaction during earthquakes, Soils and Foundations, 32(1), 173-188.

4) Terzaghi, K. and Peck, R. B. (1967): Soil Mechanics in Engineering Practice, 2nd ed., John Wiley & Sons, New York.

(b) 「論文報告集」の英文部分は、1960年に創刊された英文雑誌Soils and Foundationsとして、海外向けの発行が継続される。Soils and Foundationsが既に定期刊行論文集として国際的な地位を確立しており、国内においても実質的に本学会の論文集としての役割を果たしてきた実績を考慮し、「論文報告集」においては、Soils and Foundationsの巻、号を引き継いでいる。したがって、英文で論文を書く場合には、「論文報告集」「土と基礎」「地盤工学会誌」に掲載された文献の出典は次のように明示していただきたい。

(i) 「論文報告集」中の英文論文については、Soils and Foundations

(ii) 「論文報告集」中の和文論文については、Domestic Edition of Soils and Foundations

(iii) 「土と基礎」中の文献については、Tsuchi-to-Kiso, JGS

(iv) 「地盤工学会誌」中の文献については、Geotechnical Engineering Magazine, JGS

 

5.研究ノート執筆要領

原則として論文、報告の執筆要領に準ずる。

 

6.討議執筆要領

論文、報告等に関する有益な討議(補足資料の提示または質問を含む)は、誌上討議の形で投稿することができる。討議はその論文の第1ページの脚注に示してある期日までに論文報告編集委員会宛に提出する(あらかじめ申し出があれば1か月の延長が認められる)。

原論文の主題から逸脱したり、他所で容易に発見できる内容の討議は掲載されないことがある。また特定の利益を擁護するようなもの、単に想像的なもの、個人色の強いものなども掲載されない。なお、討議(discussion)の中では討議者は自身を「筆者」(writer)と呼び、原論文の「著者」(author)と区別する。また、著者回答(closure)の中では原論文の著者は自身を「筆者」(writer)と呼び、「討議者」(discusser)と区別する。

参考文献および図表等の通し番号は、討議(discussion)の場合は原論文の通し番号を、著者回答(closure)の場合は討議(discussion)の通し番号を、それぞれ引き継いだ通し番号を使用する。

 

7.印刷原稿の書き方

印刷原稿としては、電子媒体と紙に印刷したものの二通りを提出する。この際、電子媒体の種類によっては、作業上の都合により、別な形での提出を要請することがある。

 

8.その他

(1) 投稿原稿の受付年月日は、学会事務局に原稿が到着した年月日とします。

(2) 受理された投稿原稿のうち、論文報告集編集委員会にて「不採用」と判定された原稿については、オリジナル原稿を通知と共に返却いたします。ただし、コピー原稿は返却いたしません。

(3) 「採用(意見付)」または「条件付採用」と判定された原稿については、Eメールで判定を通知いたします。原稿修正にあたり、投稿された原稿が必要な場合は事務局へご連絡下さい。

(4) 掲載が決定した印刷原稿は返却いたしません。
したがって著者校正のため印刷原稿のコピーを必ず手元に残して下さい。