令和元年度地盤工学会賞受賞者

◆令和元年度地盤工学会賞受賞者の決定◆

令和元年度地盤工学会賞受賞者が、令和2年3月13日の理事会において決定いたしました。なお、学会賞は6月5日の第62回通常総会で授与いたします。
※以下は受賞業績名をクリックすると業績内容が表示されます※

令和元年度地盤工学会賞受賞者の決定(PDF 230KB)
(注:受賞者の所属は応募当時,掲載は応募順)

賞の名称 受賞業績名 受賞者
地盤環境賞 土質判別システム -粘性土から砂質土までの様々な土壌を連続的かつ瞬時に判別する技術-(PDF 810KB) 山田 祐樹((株)大林組)
八塩 晶子((株)大林組)
青山 裕作((株)大林組)
大熊 史子((株)大林組)
日笠山 徹巳((株)大林組)
納多  勝((株)大林組)
●授賞理由:本業績は,東北地方太平洋沖地震による原子力災害で発生した約1,400万m3の除染土壌の処分事業において,様々な性質(土質や含水状態等)の土壌を改質して可燃物(袋や植物根等)を分別する際に,複数の計測装置で測定したデータに基づいて土壌の性質を連続的かつ瞬時に判別し,改質材添加量を最適化できる画期的な技術である。これまでに現地における実証事業での成立性確認を経て,現在施工中の中間貯蔵施設では300t/時の能力を発揮しており,本業績の完成度,有効性は高い。さらに改質材量の削減は土壌貯蔵容量ならびに最終処分量の削減にも繋がり,早期復興に資するものである。以上より,本業績は地盤環境賞にふさわしいと認められた。
技術業績賞
(技術)
岩盤の原位置三軸圧縮試験方法と原位置一軸引張り試験方法の開発と基準化(PDF 878KB) 谷  和夫(東京海洋大学)
岡田 哲実((一財)電力中央研究所)
納谷 朋広((株)ダイヤコンサルタント)
●授賞理由:本業績は,室内試験によって求めることが一般的である岩盤の強度や変形特性を原位置で直接求める試験方法を確立したものである。従来の原位置岩盤試験(岩盤せん断試験や平板載荷試験など)の代替方法として,現場で大きな供試体の応力とひずみの関係を計測して岩盤の強度・変形特性を引張り強さも含めて調べることができる。不連続性や不均一性を有する原位置岩盤を対象に,準備工から載荷方法、計測方法まで信頼性の高い試験法を示しており,従前にない画期的な地盤調査技術である。この試験方法は原子力発電所施設の耐震安全性評価や岩盤に設置される構造物の安全性評価に採用されており,社会的な貢献度は高く評価されるものである。以上より、技術業績賞にふさわしいと認められた。
技術業績賞
(事業)
多様な技術を活用した住宅密集地における大規模・大深度高速道路トンネルの建設
(阪神高速大和川線 常磐工区開削トンネル工事)(PDF 3176KB)
阪神高速道路(株)建設事業本部堺建設部
鹿島・飛島建設工事共同企業体
●授賞理由:本業績は,大阪市内の渋滞緩和に貢献が期待される高速道路の施工技術に関するものである。住宅密集地での大深度(最大掘削深さ38m)・大規模(最大掘削幅41m)開削工事のため,工事中の一般道路の通行確保など,周辺生活環境に及ぼす影響を最小限にする必要があった。気泡混合土の適用による函体構造物のスリム化,既存工事計測データの活用・溝壁の安定性向上などの工夫による大深度土留め工の合理化,地中切開き工法や矩形シールド工法の採用などにより,掘削深さ,施工幅,構造物自体をコンパクト化させた。多様な技術を活用し,周辺生活環境に配慮しながら,安全に工事を完成させた。以上より,技術業績賞として認められた。
技術業績賞
(事業)

シールドトンネル地中拡幅のための下水道工事における国内最大規模の凍結工事 -隅田川幹線その3工事-(PDF 5.12MB)

東京都下水道局第一基幹施設再構築事務所
東急建設(株)
●授賞理由:本業績は,浸水被害対策としての隅田川幹線工事において,外径の異なる幹線を深さ40mの大深度・高水圧下で接続するためのシールドトンネルの地中拡幅を,国内最大規模の凍結工事により完遂させたものである。国内初となる放射状温水管を凍土外周に設置して周辺地盤の変位を最小限に抑制したことに加え,1500点に及ぶ各種計測値をCIMにより見える化し,近接構造物への影響をリアルタイムに把握・予測することに成功した。今後も都市部や大深度における工事は増加が見込まれることから,凍結工法の信頼性を高め,適用範囲を広げた功績は高く評価される。以上より,技術業績賞としてふさわしいと認められた。
技術開発賞 凍結工法による止水対策の設計・維持管理のための熱水連成FEM解析技術(PDF 1859KB) 森川 誠司(鹿島建設(株))
並川  正(鹿島建設(株))
田部井 和人(鹿島建設(株))
大野 進太郎(鹿島建設(株))
江崎 太一(鹿島建設(株))
吉田  輝(鹿島建設(株))
●授賞理由:本業績は,水-氷の相変化を考慮した熱・水連成有限要素解析プログラムを開発し,模型実験や実地盤の再現解析に適用して解析技術の予測精度を検証している。その後,東京電力福島第一原子力発電所の凍土方式遮水壁プロジェクトに適用し,凍結阻害対策を含む施工計画および維持管理計画全般に活用している。本プロジェクトは,世界で最大規模の凍結工事であり,熱・水連成解析が適用された国内初の事例であることから,高い新規性および有用性が認められる。予測精度の高い解析技術の開発により,凍結工法における凍結不良リスクの軽減を図りつつ,凍結阻害対策の経済性や工期短縮にも寄与しており,地盤工学の発展に貢献している成果と考える。以上より,技術開発賞としてふさわしいと認められた。

 

【研究・論文賞部門】

賞の名称 受賞業績名 受賞者
研究業績賞 静的・動的組合せ荷重を受ける杭および杭基礎の挙動に関する一連の研究(PDF 648KB) 松本 樹典(金沢大学)
●授賞理由:本業績は,杭および杭基礎に関して,波動理論,数値解析,模型実験や実大杭載荷試験などの結果に基づき,長年の研究を積み重ね,学術および技術の発展に大きく貢献した貴重な成果である。鉛直荷重を受ける単杭の挙動に関する研究は地盤工学会の急速載荷試験基準にも反映され,実務にも大きく貢献している。鉛直・水平の静的荷重や動的荷重を受ける群杭とパイルド・ラフト基礎に関する研究によって実設計における適用範囲の拡大に貢献した。一連の研究業績は地盤情報取得の短時間化と高密度化にも貢献し,杭および杭基礎の調査,設計,施工,品質管理に関わる技術を総合的に発展させたものとして高く評価される。以上より,研究業績賞としてふさわしいと認められた。

論文賞

(和文部門)

エネルギーNewmark法による地震時斜面滑り発生と滑り変位量の簡易評価(PDF 555KB) 國生 剛治(中央大学名誉教授)(PDF 555KB)
●授賞理由:本論文は,大規模斜面模崩壊への適用性に優れたエネルギー的地震時斜面流動量評価法に基づいた,Newmark 法とSH 波重複反射解析を組み合わせたエネルギーNewmark 法の開発に関するものである。従来の地震時斜面滑り評価法である滑り安全率による滑り面法や滑り量を評価するNewmark 法と異なり,筆者らの提案する地震時斜面流動量評価法は,斜面崩壊に関わるエネルギー収支に基づいて流動量を理論的に計算するものである。本論文では提案法により滑りの有無と残留変位算定が同時に行えること,地盤パラメータや地震エネルギー等の不確実性を考慮した判定が行い易いことを事例により提示し,人工盛土等の小規模滑りへの適用性と実務上の発展性を示した。したがって,本論文は論文賞(和文部門)にふさわしいと認められた。

論文賞

(英文部門)

Influence of installation method on performance of screwed pile and evaluation of pulling resistance(PDF 715KB) 永井  宏(室蘭工業大学)
土屋  勉(室蘭工業大学名誉教授)
島田 正夫(室蘭工業大学)
●授賞理由:回転貫入杭は杭先端近傍のウィングの回転推進力によって施工する杭で,支持層への根入れ確保のための打止め方法も含め,さまざまな工法が開発されている。近年は構造物の大型化に伴い,地震や風荷重に対する基礎杭の引抜き抵抗を検討する事例が増えている。このような背景のもと,本論文では打止め方法の違いが回転貫入杭の引抜き抵抗に与える影響について,室内加圧土槽を用いて実験的に検討している。一連の実験では杭の施工から引抜き載荷に至るプロセスを注意深く実施し,引抜き抵抗~変位関係はもとより,周辺地盤の詳細な観察結果も含む貴重なデータを提供している。また引抜き抵抗発現メカニズムの検討により新たな算定式を提案している。これらは現象の解明に重要な示唆を与え,実務にも寄与する成果として期待される。以上より,論文賞(英文部門)としてふさわしいと認められた。

論文賞

(英文部門)

Evaluation of ultimate behavior of actual large-scale pile group foundation by in-situ lateral loading tests and numerical analysis(PDF 987KB) 寺本 俊太郎(摂南大学)
新村 知也(大阪ガス(株))
阿久津 富弘((株)大林組)
木村  亮(京都大学)
●授賞理由:本論文は,共用後に解体された実構造LNGタンク基礎の一部を用いて鋼管群杭の原位置水平載荷試験を実施し,終局状態に至るまでの群杭基礎の水平力学挙動をまとめたものである。過去に例をみない大規模な現場実験を実施することで,各杭の荷重分担比を示すなど,群杭挙動の解明と設計実務に多大な貢献を与えていると考えられる。さらに,既存の弾塑性構成モデルを用いた3次元有限要素解析を行い,杭の変形,荷重分担比,地盤の変形を精度よく予測可能であることを示すことで,群杭への解析手法の適用可能性についても言及している。以上より,論文賞(英文部門)としてふさわしいと認められた。

論文賞

(英文部門)

Seismic performance of small earth dams with sloping core zones and geosynthetic clay liners using full-scale shaking table tests(PDF 1.11MB) 澤田  豊(神戸大学)
中澤 博志((国研)防災科学技術研究所)
小田 哲也(兵庫県)
小林 成太(兵庫県)
澁谷  啓(神戸大学)
河端 俊典(神戸大学)
●授賞理由:本論文は,ジオシンセティッククレイライナー(GCL)を用いて改修されたため池堤体と従来工法の傾斜コアで改修された堤体の動的挙動と耐震性について,Eディフェンスでの実大規模振動実験の結果を基に論じたものである。堤体の変位や堤体内部の加速度の計測結果から,GCL改修堤体の耐震性が傾斜コア改修堤体に劣らないことを明らかにしている。今後,傾斜コアに必要な良質な粘性土の枯渇が予想されるため,従来工法に代わる改修方法が検証された意義は大きく,本成果は,ため池整備の実務に取り入れられる価値を有している。さらに,数値解析のベンチマークとしての今後の活用が期待できるなど,学術上の重要な情報を与えている。以上より,論文賞(英文部門)としてふさわしいと認められた。
研究奨励賞 Characterization of transition from Darcy to non-Darcy flow with 3D pore-level simulations(PDF 1.11MB)
橘  一光(福島工業高等専門学校)
●授賞理由:本論文は,粒子群中の間隙水の流れをシミュレーションによって表現し,ダルシー流れから非ダルシー流れへの遷移,および非ダルシー流れの領域における透水係数の非線形性について論じたものである。均等粒径の粒子が等間隔で配置された条件の解析では,3次元で粒子サイズ以下の流体の挙動を高精度に表現することで,これまでの地盤工学分野の数値解析では表現が難しい物理を直接的に表現することに成功している。さらに,本論文で示した解析手法に関する精緻な検証結果は,非ダルシー流れの領域における地盤材料の透水挙動に関する研究に対して大きな影響を与えるものと考えられる。以上より,研究奨励賞としてふさわしいと認められた。
研究奨励賞 Rate effect on the stress-strain relations of synthetic carbon dioxide hydrate-bearing sand and its dissociation test by thermal stimulation(PDF 1.07MB) 岩井 裕正(名古屋工業大学)
●授賞理由:本論文は,二酸化炭素ハイドレート(CDH)含有地盤の強度増加メカニズムと時間依存性挙動の関係およびCDH分解時の地盤変形挙動について論じている。ガスハイドレート含有地盤では最大軸差応力―ハイドレート含有量の間に正の相関があるとされてきたが,低温高圧三軸圧縮試験により非常に遅い載荷速度の場合には強度増加が現れないという結果を示している。また,加熱によるCDH分解試験では発生したCO2ガスおよび水によって急激に間隙圧力が上昇し一瞬にして有効拘束圧が失われる現象が発生することを定性的に明らかにしており,地盤工学の学域に留まらない成果を記述した論文である。以上より,研究奨励賞としてふさわしいと認められた。
研究奨励賞 Mechanical role of reinforcement in seismic behavior of steel-strip reinforced earth wall 澤村 康生(京都大学)
●授賞理由:本論文は,帯鋼補強土壁を対象に補強材の地震時における力学的役割を遠心模型実験の結果に基づいて論じている。補強材張力の発現は壁面の振動特性に影響を受け,補強材張力と壁面への作用土圧の位相が一致すること,主働領域内の補強材は壁面近傍の土を拘束することで壁面の変位や転倒を抑制することを明らかにした。さらに,補強材が補強領域と背面盛土との剛性差を低減させており,強地震時にも補強土壁と背面盛土が連続的に挙動し靭性を発揮することを確認している。大きなレベルの地震動に対して,帯鋼補強土壁の現行耐震設計手法は安全側の設計を与えることを示すなど実務に貢献する結果も示している。以上より,研究奨励賞としてふさわしいと認められた。